大嫌いの裏側で恋をする
どうしよう。
ツン、と。 鼻の奥が熱くなる。
ヤバい……。
咄嗟に唇を噛みしめる。
だって。
泣きたい時、私は普段の倍、いやそれ以上。
素直になれない自覚がある。
自覚は、あるのに。
つよがりを、止める術を私は知らない。
そして、お決まりのように飛び出るのは生意気な言葉だ。
「な、なに……に、怒ってるか知りませんけど、そもそも高瀬さんがどこぞの美女との電話で席外したから秋田さんと2人きりになったんですよ!」
「……あ?」
「女にだらしない人に、男女のことで怒られたって何がなんだかさっぱりです!!」
「お前な……っ」
感情的になってる私に、つられるようにして何かを言おうとした高瀬さんが。
その言葉を飲み込み、前髪を掻きむしりながら。
私から視線を外し舌打ちする。
「……だったらいい、何も言わねーから勝手にしろ」
そして、続いた言葉と声は冷たかった。
私は、息を吐き出すことがスムーズにできなくて。
ひゅっ、と喉が変な音を鳴らす。
この場の空気が。
何してるんだよって、私を責めるみたいに重いの。