君のくれた奇跡。

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「眠…っ」

スマホのアラームが鳴り、目が覚めた。

私は結鈴。1ヶ月前に憧れのJKになったばかり。

いつも遅刻ギリギリだけど、今日は早く起きれたかな!

そんな小さな希望を抱き、布団でうじうじしながら時計を見ると、7時15分。また遅刻じゃん!

「結鈴ー!遅刻するわよ!」

下から大声で私を呼ぶお母さんの声。

「何で起こしてくれなかったの!」

「何回も起こしたわよー!」

そんなたわいもないいつもの会話をしてから

急いでまだ真新しい制服に着替え、お気に入りのリボンを胸元に付ける。

寝癖がついたボサボサのセミロングをさっとハーフアップに結び、準備完了。

「げほ、」

最近よく咳出るんだよね、風邪引いたのかな、、

そんなことを考えながら時計を見ると7時35分。

意外と時間あるな、早めに学校行こう!

「行ってきます!」

「朝ご飯はー!?」

「いらない!」

返事をしてからすぐ家を飛び出し、歩いて学校に向かう。

シワ一つないブレザーにプリーツが綺麗なスカート。

磨き上げられた茶色のローファーに、進学祝いの大きなスマホ。

これは私が夢見ていた高校生活だ。

小学校の頃からの親友の桜優と吹奏楽部で頑張って、3年間満喫して、、

そんなこれからの高校生活を妄想しているうちに学校に着いた。

朝練だ、音楽室行かないと!

「誰も来てないな…今日は1年のみの練習だったっけ、」

周りを見渡すと誰も来ていなかった。

ケースからフルートを出してチューニングを始めた。

「早すぎたかな、、」

まだ部活に慣れていない結鈴が不安になりきょろきょろしていたその時。

ドアの方から可愛らしい笑い声が聞こえてきた。

この声は…。

「桜優!?」

すると大声で笑いながら音楽室に入ってくる桜優の姿があった。

「音楽室入ろうとしたら結鈴がきょろきょろしてて、ついつい笑っちゃったー!笑」

「もう、そんなに笑わないでよー、」

笑ってる桜優を見てるとなんだが笑けてくるなあ、、

結局最後は私も一緒に笑っていた。

それが桜優のすごいところ、みんなを笑顔にしてくれるんだよね、

私はいつも目立たないほうで、桜優とは真逆。

だから桜優の明るい性格が羨ましい。

桜優はいいな、、桜優はだって、優しいし面白いしそれに、

「結鈴ー?また後ろ向きなこと、考えてたでしょー!」

私がぼーっとしてると、いつもみゆは考えてること見透かしてくる、、

「いや、ちがっ…!」

「羨ましがってても、結鈴は結鈴の良い所があるし、それが結鈴なんだから!」

図星だ、すごい……。

「小学校からの仲なんだから、舐めないでよねー!」

そんな会話をしてるうちについ練習を忘れてしまっていた。

5分も経ってる…桜優と話してると時間忘れるんだよね、、

「じゃあ桜優、もうそろそろ練習始めよう!」

「おーう!」


―、ガラッ。


少し練習をしていると、同じ一年の愛香と維乃が来た。

「おはよー!」

「桜優と結鈴ちゃんだ!」

「愛香と維乃!おはようー!」

「おはよう」

「2人とも早いねー!」

「早すぎちゃったけどね!笑」

こんないつもの賑やかな会話が飛び交う部屋で4人それぞれの練習を始めた。

「げほっげほっ、」

パートの練習を始めると、急に咳が出始めた。

「結鈴ー?風邪引いたの?大丈夫?、」

やけに心配性な桜優がすぐ側に駆け寄ってきた。

「うん、この頃咳酷くて、風邪引いたみたい、」

最近はたまに息苦しくなる時もあるんだよね、

まあでもすぐ治るから大丈夫なんだけど!

桜優に余計な心配掛けないようにこのことは言わないでおこう。

「なんかあったら言ってよ!」

「うん!」

パート練習を終えると、丁度1時間目の授業の5分前ベルが鳴った。

「じゃ、戻ろっか!」

楽器を戻して、音楽室を出た。

「そうだ!この前駅前のカフェでねー!」

「うんうん」

みんな一緒のクラスじゃないこともあって、

途中からは桜優の話を聞きながら2人で帰っていた。

話すの楽しいから2人でもいいんだけどね!

「でさー!デートしてるとこ見ちゃったんだー!」

桜優が嬉しそうに話しているのを上辺で聞きながら、

他のことを考えていたその時、

同じクラスの人気者、七瀬 蒼くんとぶつかってしまった。


――、!?


「きゃっ!!」

「えっ結鈴!?」

「わっ!」

「ご、ごめんなさい…!」

「いいよ別に、怪我ない?大丈夫?」

すると七瀬くんは優しく微笑んでくれて、手を貸してくれた。

綺麗な手…。そう思いしゃがんだまま見つめてしまっていた時、

「どうしたの?どこか痛い?打った?、」

「結鈴、大丈夫…?」

そんな七瀬くんと桜優の心配そうな声が頭に入ってきた。

「大丈夫だよ!ごめんね七瀬くん、桜優も、」

私はそう言い2人に向かって少しだけ微笑んだ。

遠慮がちに七瀬くんの手を借り、起き上がると、

「相川ってあんまり笑わないイメージだったけど、
笑ってる顔可愛いじゃん!
もっと笑えよ!じゃあな!」

と七瀬くんは笑ってどこかに走って行ってしまった。

私は何故か、胸がドキドキしてしまっていた。

頭に浮かぶのは、最後の彼の笑顔。

恥ずかし……、、ぶつかった上にこんなこと言われるとか、、

そういう性格がみんなを惹き付けちゃうんだ、すごいな。

あれ、私なんでそんなこと考えてるんだろ、、

そんなことを考えてると、いきなり可愛い声が耳に入ってきた。

「ゆーずー?どうしたの、七瀬に見惚れちゃった!?笑」

「ち、違うよ!ていうか早く戻るよ!!」

私は焦りを隠して、桜優の手を引いて教室に帰った。

私、七瀬くんに、見惚れちゃったの、、?

いや、違う、違う、、

じゃあさっきのドキドキはなに、?

とにかく、好きじゃないもんね…!!

だって私、誰も好きになったことないし…、、!

私は、昼休みが始まるまでの間、ずっと自分に問い掛け、納得させていたのだった。

朝のドキドキが、初めての恋の合図だとは知らずに。
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