『未成年』なんていらない
閨川の職業体験が終わってからは、当然会うことは無かったのだが、一昨年、家から近いからという理由で入ったこの高校で偶然再会することが出来たのだ。

1年の時の生物と2年の時の物理も、担当は閨川だったのだが、ひなりには授業以外で話す勇気など無かった。
ましてや、
「幼稚園の時に会ったことありますよね?」
なんて、遠い昔の話を切り出せるわけがない。

話すことは諦めよう。
先生を見ているだけで私は幸せなんだ。

今まで自分に心の中でそう言い聞かせて過ごしてきた。

しかし、今日から閨川が担任になり、ひなりの心は嬉しくももどかしい複雑な気持ちになっていた。
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