mimic
こんなこと、言っていいのかな。
結局わたし、こうやって、唯ちゃんの次は海月に依存しちゃうんじゃないかな。
そういうことなんじゃない?

そんな自分がなによりも一番怖い。
海月が好きすぎて、欲しすぎて。無しの生活に、耐えきれなくなる自分が。


「あの、さ」


なかなか口を割らないわたしに業を煮やしたのか、海月はちょっと調子外れなトーンでぽつりと言った。


「だったらその、不安とやらを、俺に分けてくれればいいんじゃない?」


頬の涙が通ったあとを指先で辿った海月は、目尻に残る涙をすくった。


「小夏ちゃん、目が真っ赤だよ」


目尻に皺を寄せ、からかうように笑う。


「兎みたい」
「……」
「ほら、落ち着いて。ワイン、飲む?」


赤茶けた髪の毛を揺らし、目を細める。
そして回れ右をし、ワインのボトルを掴もうと屈んだ海月の腰に、ぎゅっと抱きついた。不恰好に、とてもぎこちなく。


「どうして、わたしに触れないの?」


ドキドキが、海月に伝わってしまいそう。
心臓がもうはち切れそうだった。


「あのとき勢いでわたしなんかと寝ちゃって、後悔してるの……?」


ずっと聞きたかったことをついに口にして、体から力が抜けた。
くったりと、空気が抜けた風船みたいに。


「小夏……」


囁いて、海月はわたしの肩を掴む。
見つめられる瞳はいつものように三日月のような形をしているけれど、なぜだか今は、笑っているようには見えなかった。
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