mimic
「みつ……きっ」


名前を呼ぶと、眉間に皺を寄せてわたしを見る。キスをせがむと、ちょっと困った風に目をすがめ、唇をぺろりと舐めた。


「すき……」


嬉しくてわたしはきつく抱きつく。


「参ったな……おかしくなりそうだよ、俺」


海月は片目を器用に細めながらも、堪えるような、甘やかな表情で言った。

それが、すごく嬉しい。

狐の姿に化かすのも、人間に戻すのも、海月の表情を変えるのがこの先ずっと不変的に、わたしの役目であればいいのに。
ずっと海月の目に映るのが、わたしだけだったらいいのに。

体の奥が痺れるように迫りくる快楽の波に溺れながら、わたしはそんな贅沢なことを思った。






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