mimic
「小夏ちゃん、俺のこと好きになってくれたんでしょ?」
「えっ……」
「だって、好きな人としかそーゆーことしない、って言ってたじゃん。俺、誘われたってことは、自惚れていいってことだよね」


いたずらっぽく笑う海月に対し、わたしは自分でもわかるくらい赤面してしまって、同時に胸の奥がきゅんとした。


「り、理屈っぽいこと言うね!」


恥ずかしまぎれに思わず、声を上げて笑うと、海月は口角をくっと上げて満足げに微笑んだ。
子どもみたいに無邪気に。


「このワイン、美味しいね!」


照れ隠しにワインを喉に流し込んで、わたしは気づいた。

庭の葡萄とか、ピンクの虫もどきとか、黒いハートの種とか。
海月と一緒ならなんてことない普通の日常の光景に、すごくときめくってことに。

庭からくる風が気持ちいい。渋さがちょうどいいワインはとても美味しい。
隣に海月がいて、とても幸せだった。




< 56 / 117 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop