夏のソラの雪
昼休みの賑やかな教室の入り口に立っていた俺に、




「誰か探してるの?」




少しキツめな顔をした女が声をかけてきた。



どのみち誰かに訊くつもりだったし、ついでだからコイツに真雪の名前を告げた。




真雪の名前を聞いた途端、




彼女の表情がピリッと強張った。




……なんだ?



真雪と仲悪い奴だったとか?




「真雪なら……休み。熱出したの」




こう言って彼女は切れ長の瞳で、睨むように俺を見上げた。




こんなこと言うのは不謹慎なのかもしれないけど……、




普通の欠席で良かったって今、思ってる。





それにしても、




「この時季に熱?」




春も終わりかけてるこの時季に、熱なんか出すのか?




訝しんだ顔を浮かべた俺に、





「出るのよ。真雪は」




目の前の女はますます表情を厳しくした。




俺を侮蔑したようなその表情はまるで、




おまえは真雪のことを何も知らない。




そう言われてるみたいに感じたのは、気のせいだろうか……。
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