夏のソラの雪
「いくら暖かくなってきたからって、コンクリートの上で脱がせたりするからよ」




「……はっ?」




突然発した彼女の言葉に頭の中は白く染められていく。




呆然とする俺に構うことなく、目の前の女は相変わらず鋭い視線でこちらを見てる。




「……見てたわけじゃないわよ。真雪の様子がおかしかったから問い詰めたの」




だからコイツ、さっきからやたら突っかかってきたんだな。




俺が、真雪の傷跡を見て拒否したってことを知ってるから……。




イラついて黙り込んだ俺に、




「謝りにでも来たのっ?」




突き放すような声。



謝りたい、のか?
俺は……。




「好きにすればいいけど」




言い捨てて身を翻す彼女が最後に俺を一瞥。




入り口で立ち尽くす俺の頭の中はグチャグチャだ。




グチャグチャで収まりのつかない頭の中に、真雪の笑顔だけが鮮明に浮かび上がる。





面倒な女に引っかかっちまったな……。




でも、




それさえ心地良いって思えるのは、




真雪のことばかり考えてることに、心が満たされるてるからかもしれない……。



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