夏のソラの雪
昼休みのざわついた廊下の端っこで、携帯の画面を見つめる。





無駄に緊張感を帯びた左手の親指で、一回息を吐いてから通話ボタンを押した。




コール音がやたら耳に響いて緊張を誘う。



このまま切ってしまおうかって気になる。




いつからこんな臆病になったんだ?





「……愛与?」



受話器越しに真っ先に飛び込んできた自分の名前が、耳から頭に広がる。




「……うん」




「どうしたの?」





確かに……。




どうして電話してるんだ……。




真雪に訊かれて思わず、都合の良い言い訳を考える。




もちろん、そんなもん思い付くわけもなく、




「熱出したってクラスの奴に聞いたから」




大丈夫か?




この一言が続けられない情けない俺。




「あぁ……。知海(ちひろ)が言ったんだね。微熱だから大丈夫って言ったのに」




知海ってのは多分、さっきのややキツめの女だろう。




さっきの感じからしても真雪とかなり仲が良さそうだったし。




「熱下がったのか?」




素直に心配してるって言えないから、さっきから遠回りばっかりしてる。
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