夏のソラの雪
俺はキスが嫌いだ。





何の感情も無くったって快楽を感じられるセックスと違って、




キスは何の感情もナシにしたって気持ち良くもなんともない。




正直、メンドクサイだけ前戯用の作業だった。





それが違うって……今知った。




少し苦しそうに息をつく真雪を何度も奪いながら、




腹の奥からぶつけたい程の感情は、




真雪のカラダに求める快楽じゃなくて、




真雪が愛しいって思う生まれて初めての感情だ。





これ以上くっ付かないくらい真雪の体を自分に寄せて、




真雪の顔を正面から見下ろす。




少し赤みの戻った頬と、まだ濡れた唇を俺が独り占めしてる。




それだけで、




今までしてきたセックスより満たされる心が、自分で滑稽に思える。




「……愛与」




やたらにか細い声に呼ばれて合わせた視線は、




不安げに揺れていた。




……それでやっと気づく。




この満足感が、一方的なものだってことに……。
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