夏のソラの雪
真雪のマンションの近くまで来たところで、




入り口の前に立っている真雪が見えた。



「……愛与」




近付いた俺に気付いて、小さく微笑みかけてくる。




それを無言で交わし、真雪の隣に立った。




無表情な俺を見上げる真雪の顔が不安そうに沈む。




ここで笑ってやれないの自分が、自分でもガキくさいってわかってる。




「……泰希に聞いた?」



「付き合ってたんだろ」



頷いた真雪に黙り込む俺。




重たい沈黙が、雨上がりの空気と混じり合う。




「泰希が二年生でわたしが最初の三年生のときに……泰希が助けてくれたの」




ポツポツと言葉を紡いでいく真雪の声が軽く震えている。




「胸の傷でわかってたと思うけど……生まれつき体が弱くて。だから入院して三年生やり直し」




俺の知らない真雪が次々出てくる。




真雪が好きっていうなら……俺は自分からもっと真雪を知ろうとするべきだったのかもしれない……。






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