夏のソラの雪
ちょっと眠たい体で家に戻ると、





「メグちゃん……おかえり」




リビングのソファーに、懐かしい顔があって、




自然と顔が綻んだ。




「ばぁちゃんっ」




晩飯の片付けをする母親にも、


ばぁちゃんの向かいに座る父親にも見向きもせず、




真っ直ぐにばぁちゃんの隣に座った。





「メグちゃん、また大きくなったねぇ……」




目の不自由なばぁちゃんが、俺の頭や顔を撫でていく。




小さくてシワシワなこの手が、小さい頃は大好きだった。





風呂に向かった父親と、ばぁちゃんの布団を用意しに行った母親が居なくなって、




リビングで二人きりになった。




「メグちゃんと二人きりも、久しぶりやねぇ」




俺の居る方に顔を向けて、優しく笑うばぁちゃんに相槌を打った。





ばぁちゃんの目がまだ見えた頃、




六歳上の兄貴と、兄貴が小学生になったのを期に共働きになった両親の居ない家に、




俺は、いつもばぁちゃんと二人でここに居た。





そこで何十回も話してくれたのが、




ばぁちゃんがつけてくれた、俺の名前の話だった。
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