夏のソラの雪
学校からの帰り道。




知海に会ってからずっと、真雪のことが頭から離れない。





知海に食い下がって、頭下げて真雪に会わせて貰えるように頼めば……良かったのか?





胸がモヤモヤして堪らない。





ばぁちゃんを送り届ける為に、両親が出掛けて空っぽの家は真っ暗で、




何となく入りたくない……。




また真雪に会わずに、一日が終わってしまう……。





それが怖い。





握り締めていた手のひらをパッと開く。



やっぱり俺の手のひらは、大切な人を守ることなんて出来ないのか……。





グッと握り締めた拳を、玄関に思い切り叩き付けた。





何度も何度も……行き場の無い苛立ちをぶつけて、血が滲んでる。





でも、まだ足りない……。





手を振り払った真雪に与えた痛みは……きっと、もっと酷かった……。





ヤケになって玄関を殴り続けていた背中が、




「愛与っ!」





ふわっと温かくなった……。





胸元に回ってきた細くて白い腕にそっと触れ、名前を呼んだ声は、




「……真、雪?」




驚く程、震えていた……。
< 72 / 102 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop