夏のソラの雪
一人で戻る。
そう言い張る真雪を振り切れず、俺はタクシーを呼んだ。
家の前に出て、薄暗くなった空の中、
手を握った真雪と並んでタクシーを待つ。
俺に少しもたれるように身を寄せる真雪の瞳は、
どこか虚ろ気に宙を見つめていた。
やっぱり無理させたのか……?
不安になって覗き込んだ顔は、
俺と視線が合うなり満面の笑顔に変わる。
「大丈夫。愛与に元気もらったもんっ」
こんな恥ずかしいセリフも、真雪に言われたら自然と顔が綻んで、
気がつけば真雪の頭を軽く抱き寄せていた。
「愛与、これっ」
制服のポケットを探り、真雪が差し出したのは、
三色の糸で紡がれたプロミスリングだった。
「愛与と約束が叶ったら渡そうと思ってたの」
はにかんだ真雪が、俺の手首にプロミスリングを巻いていく。
「愛与との約束……ずっと守れますように」
そう呟いてタクシーに乗り込んだ真雪を、
俺はいつまでも見送っていた。