夏のソラの雪
堪えきれず病院の屋上に駆け上がった。





真雪の悲しそうな顔も声も、頭から離れない。





ドアを開けた瞬間、横向きに吹き抜けた風が、




頬を撫でた。





ドアが閉まると同時に目から生温い感触が垂れ始める。




なんだ俺……、




泣いてるのか?





俺が突き放した癖に泣いてるとか、笑える……。




好きだから身を引くんだ。




好きだから離れるんだ……。




頬に伝った涙を手の甲で擦れば、




手首に巻いたプロミスリングが軽く頬に触れた。





照れくさそうに差し出した真雪の手のひらの、体温を思い出す。





おまえはどんな想いで、糸を紡いだんだ?





それを受け取った、俺のこの手が与えられるのは、




真雪の為に真雪から身を引くという、




どうしようもない形の愛だけ……。




真雪と交わした約束。




ずっと一緒に居るって言ったのに……守れなくて、ごめんな……。



プロミスリングに染み込んだ涙の数だけ、




俺は真雪を愛してるから……。







それから一週間後。




知海と共に、真雪はこの地を後にした。
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