夏のソラの雪
「前みたいにすぐ熱出したりしなくなったよっ? それに……」





こう言って握っていた俺の手を、薄ピンクに染めた頬まで滑らせた。




「もう、病院抜け出して愛与に迷惑かけたりもしないっ」





気持ちが高ぶったように言葉を発した途端に、




真雪のはにかんだ笑顔が……ゆっくりと崩れ、




瞳にはみるみるうちに、涙がこみ上げ始めた。




そのうちの一粒が零れ落ちるなり、





「っ普通の女の子……みたいは無理だったから……、愛与……物足りないかなっ?」





嗚咽混じりに俺に尋ねる声。




真雪の薄ピンクの頬が、どんどん涙で濡らされていく。




「そんなの……いらねぇよっ」




小さく震えてる真雪を、必死に抱き締めた。




別れ際に俺がついた嘘を、




真雪はこうしてずっと気にしていたらしい……。





「ごめん真雪……」





あんな嘘で傷付けたくなんかなかった。




……今更言っても、言い訳にしかならない。




「……謝らなくていいよっ。だから……言って?」




顔を寄せる真雪の指先が、俺の指に絡む。


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