冷徹騎士団長の淑女教育
「彼女はアイヴァン騎士団長の別宅に住んでいる、いわば養女のようなご令嬢です」

エリックが、クレアの素性を簡潔にまとめてくれた。

「まあ、そうなの? 年中しかめ面の彼にこんなかわいらしい娘がいただなんて、意外だわ。彼も、教えてくださったらよいものを」

王妃が、朗らかな笑いを響かせる。そしてクレアに向けて、そっと笑みを浮かべた。

「よろしくね、クレア」

「……はいっ、王妃様!」

緊張しすぎて、声が裏返ってしまった。これ以上は、身が持たない。

後ろで王妃との謁見を待っていた貴族が、せかすように交代を催促してきたのは、幸いだった。
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