冷徹騎士団長の淑女教育
聞き慣れた、耳に心地のよいバリトンの声。

背後に長身の男の気配を感じ、クレアの心臓がドクンと大きく鼓動を打った。



「彼女を、お借りしてもよろしいですか? ダグラス執務官長」

「おや、クロフォード騎士団長。この美しいご令嬢は、今宵のあなたの連れですか?」

「いいえ。そうではありませんが、彼女に話があるので」

淡々と語るアイヴァンは、クレアの方を一切見ようとはしない。執務官長だけに視線を注ぐ彼の端正な横顔を見ながら、クレアの胸に焦りが広がっていく。

「そうでしたか。彼女は少し加減がよくないようなので、ご無理なさらぬよう。では、私はこれで」

執務官長は人好きのする微笑を浮かべると、二人のもとから立ち去った。

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