冷徹騎士団長の淑女教育
(私は、女としてあなたを求めているの……)

男は皆女の体が好きなんだと言った、エリックの言葉を思い出す。

アイヴァンだって、思い込んでいるだけなのだ。クレアが、いつまでも子供なのだと。

クレアは手を伸ばすと、アイヴァンの手を取った。

そして、自分の胸の膨らみに押し付ける。




アイヴァンの厳格な顔が、今まで見たこともないほどに怯んだ。

「あなただって、価値観を変えてください。そして、私がどうしてあなたを求めているか気づいてください。私はもう、あなたが思っているような子供ではありません」

胸の下で乱れ打つクレアの心臓に、きっと手を押し付けられているアイヴァンも気づいているだろう。

「やめろ……」

呻くように言うと、アイヴァンはクレアの胸から手を離そうとした。だがクレアは両手で必死に彼の腕にしがみつき、それを阻止した。

「私は、女としてあなたをお慕いしているのです……」

暗がりの中、漆黒の瞳がみるみる見開かれていくのが分かった。
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