冷徹騎士団長の淑女教育
アイヴァンは、ちらりと御者席の方に視線をやった。
客席と御者席を隔てている窓はほとんどが黒塗りで、かろうじてガラスの小窓がある程度のものだった。視界の悪い夜道を凝視しながら馬を操っている御者は、客席の方を振り返る気配もない。
アイヴァンは、静かに寝息をたてているクレアの金色の髪に触れた。
そして、耳の上から頬、顎先へと指先を滑らす。
滑らかな肌の感触に、焼けつくような感情が湧き立った。
先ほどの彼女の愛の告白が、胸の奥をいまだに焦がしてやまない。
彼女は、エリックに恋しているのだと思っていた。
舞踏会で踊る二人は恋人同士そのもので、アイヴァンは大人げない嫉妬心を押し殺すのに必死だった。
だが、クレアはずっと、自分のことを想ってくれていた。
おそらく、その感情は彼女が世間知らず故のまやかしに過ぎないだろう。
――いいや、そうでなくてはならない。
自分と彼女は、そういう関係にはなりえないのだから。
客席と御者席を隔てている窓はほとんどが黒塗りで、かろうじてガラスの小窓がある程度のものだった。視界の悪い夜道を凝視しながら馬を操っている御者は、客席の方を振り返る気配もない。
アイヴァンは、静かに寝息をたてているクレアの金色の髪に触れた。
そして、耳の上から頬、顎先へと指先を滑らす。
滑らかな肌の感触に、焼けつくような感情が湧き立った。
先ほどの彼女の愛の告白が、胸の奥をいまだに焦がしてやまない。
彼女は、エリックに恋しているのだと思っていた。
舞踏会で踊る二人は恋人同士そのもので、アイヴァンは大人げない嫉妬心を押し殺すのに必死だった。
だが、クレアはずっと、自分のことを想ってくれていた。
おそらく、その感情は彼女が世間知らず故のまやかしに過ぎないだろう。
――いいや、そうでなくてはならない。
自分と彼女は、そういう関係にはなりえないのだから。