冷徹騎士団長の淑女教育
翌日から、クレアの新しい生活が始まった。

レイチェルは、まずはクレアが住むことになったこの邸について話してくれた。

「ここは、ユーリス王国の王都アルメリアの郊外に建てられた、アイヴァン様の別宅になります。緑豊かな、とても素敵な場所ですよ。アイヴァン様のお住まいになっているクロフォード公爵家の本宅は、ここから馬車で三十分ほどの街中にございます。アイヴァン様は、そこから毎日お城に出仕なさっておられるのです」

アイヴァンは、ユーリス国の公爵家の嫡男でありながら剣技に長けていて、齢二十歳にして王宮騎士団の小隊長を担っているほどの人物らしい。

二十歳というと一般的には若い部類に入るのかもしれないが、小さなクレアにははるか先を生きる大人に感じた。

だからレイチェルがそれを誇らしげに語っても、いまいちピンとこない。

とにかく、彼がお金持ちということだけは分かった。

そうでないと、こんな豪華な別宅を所有したり、哀れな子供を拾ったりはできないだろう。




クレアが住まうことになったこのアイヴァンの別宅は二階建てで、一階には食堂や厨房、ホールやティールームなどがあった。二階には部屋が十部屋近くあり、初日に案内されたバスルーム付きのクレアの部屋はそのうちの一つだった。

どこもかしこも、日の光をよく通す明るい部屋ばかりだった。玄関の先には緑の芝が広がり、一角には色とりどりの花々が咲き誇る見事な庭園もある。

別宅に住んでいる使用人は、レイチェルと庭師の男だけだった。レイチェル曰く、アイヴァンは父親である公爵から譲り受けたこの別宅に、信頼を寄せる者しか置いていないらしい。
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