冷徹騎士団長の淑女教育
アイヴァンはダグラスの一太刀を剣で抑えると、次々と降りかかる別たちの剣を交わして、払いのけていく。

狭い空間だから、一度に相手をするのは三、四人が限度ではあるが、それでも次から次へとアイヴァンに襲いかかる男たちはきりがないほどいた。

一人の男の太刀が、アイヴァンの肩を切りつける。

「くっ」と顔をゆがめながらも、アイヴァンには肩の傷を気遣う余裕などあるはずもなく、霰のように降り注ぐ剣を交わし続けなければならなかった。

「アイヴァン様……!」

力の限りクレアは叫んだ。愛する人が死と直面している今、もはや淑女としての威厳を保っている余裕はなかった。

だが、クレアが彼を助けにいったところで、どうにもならないどころか足手まといになるのは目に見えていた。

アイヴァンは、命を懸けてクレアを守ろうとしているのだ。

それを見守り、見届けなければならない。そう理解したクレアは、足を踏み出すことなくじっと耐えた。

だが意思とは反対に、瞳からはとめどなく涙が溢れ出す。
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