冷徹騎士団長の淑女教育
第十章 国を担う者

真っ白な世界を揺蕩いながら、アイヴァンは思い出していた。

あれは、少年騎士団に加入したばかりの十三歳の頃だったと思う。

『あいつなんだよ、腕は立つが不愛想だな』
『聞いたか? 公爵家の血筋とはいえ、あいつには卑しい血が流れているんだとよ』

愛想のないアイヴァンは、仲間内からつま弾きにされていた。

アイヴァンを憎む義母が流した噂も加わって、彼を蔑みの目で見ていた輩が多かったのも原因のひとつだ。



毎日朝から晩まで訓練所で汗を流し、夜は宿舎で死んだように眠りにつく。

語らい合う友人など、欲しいなどと思ったことは一度もなかった。

そんなアイヴァンの唯一の心の癒しは、夕食後、城の片隅で夕焼け空を眺めることだった。

王城の敷地内にある図書館はやや高台に位置しており、その裏庭からは王都アルメリアが一望できた。

学者よりも血気盛んな武術者が多いユーリスの王城のことだから、図書館の界隈はいつも閑散としている。

そのため人の寄りつかないその裏庭はアイヴァンの格好の安らぎ場所だった。
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