冷徹騎士団長の淑女教育
ある日の夕食後、アイヴァンがいつものように秘密の場所に行くと、先客がいた。
肩までの褐色の髪をした、二十歳くらいの美しい青年だった。穏やかなブラウンの瞳に、どちらかというと女性的な儚げな笑顔。筋肉自慢の男たちに日々囲まれているアイヴァンにしてみれば、まるで異国の住人のように思えた。
青年は、とても哀しそうな眼をしていた。
『やあ、君も孤独なのかい?』
青年の方でもアイヴァンの心の内を見抜き、いつしか二人は夕方になると毎日のようにそこでともに過ごすようになった。
アイヴァンを蔑むこともなく、過剰に褒めたたえることもなく、あるがままを受け止めてくれた彼は、アイヴァンにとって唯一心を開ける相手になっていく。
やがてアイヴァンは、彼が表にほとんど姿を現すことのない、この国の若き王ハワード本人であることを知る。
ハワードは幼い頃からの想い人との間に子をなしたが、数日後に何者かに愛する人を毒殺されるという壮絶な過去を背負っていた。そのうえ幼い娘もある日忽然と姿を消し、行方すらわからぬ状態なのだという。
亡き父の意向のまま、その後愛してもいない異国の令嬢と無理やり結婚させられ、気落ちしていた。
自分が王であるがゆえに、愛する女性と娘を失ってしまったのだと、ハワードはいつも悲観していた。
肩までの褐色の髪をした、二十歳くらいの美しい青年だった。穏やかなブラウンの瞳に、どちらかというと女性的な儚げな笑顔。筋肉自慢の男たちに日々囲まれているアイヴァンにしてみれば、まるで異国の住人のように思えた。
青年は、とても哀しそうな眼をしていた。
『やあ、君も孤独なのかい?』
青年の方でもアイヴァンの心の内を見抜き、いつしか二人は夕方になると毎日のようにそこでともに過ごすようになった。
アイヴァンを蔑むこともなく、過剰に褒めたたえることもなく、あるがままを受け止めてくれた彼は、アイヴァンにとって唯一心を開ける相手になっていく。
やがてアイヴァンは、彼が表にほとんど姿を現すことのない、この国の若き王ハワード本人であることを知る。
ハワードは幼い頃からの想い人との間に子をなしたが、数日後に何者かに愛する人を毒殺されるという壮絶な過去を背負っていた。そのうえ幼い娘もある日忽然と姿を消し、行方すらわからぬ状態なのだという。
亡き父の意向のまま、その後愛してもいない異国の令嬢と無理やり結婚させられ、気落ちしていた。
自分が王であるがゆえに、愛する女性と娘を失ってしまったのだと、ハワードはいつも悲観していた。