冷徹騎士団長の淑女教育
クレアは息を呑むと、そろりとエリックを見上げた。

口を引き結び必死に言葉を抑えているクレアを、エリックは見透かすような目で眺めている。

「もう、彼のことは好きではないわ」

クレアは、静かに言い切った。

「私は、いずれはこの国を担う者。恋に溺れる時間などないのよ」

「ふうん。国を担う者、ね」

青い目を細めながら、エリックはますますクレアをじっとりと眺める。

「国を担う者にも、世継ぎは必要だ」

耳に息がかかるほどの距離で、エリックが囁いた。甘さを孕んだ彼の物言いに、クレアは一瞬危機感を覚える。

だがすぐにエリックはクレアから身を離すと、同時に手に取っていた髪の毛も開放する。

「また来るよ。シャーロット王女」

それからひらりとバルコニーの柵に飛び乗ると、手慣れたようにするすると柱を降りはじめた。

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