冷徹騎士団長の淑女教育
クレアが城で暮らすようになって三カ月後。

王都アルメリアの記念広場では、叙勲式が行われることとなった。

長年失踪していた話題のシャーロット王女が出席するとあって、広場はお祭り騒ぎになっていた。

アルメリア中の人間が駆け付けたのかと思うほど、辺りは人で溢れ返っている。大きな円を描くようにして民衆で埋め尽くされた広場の中心部には赤い絨毯が敷かれ、ユーリス王国の政治を掌る上層部の人間と王女シャーロットが鎮座していた。




本日の叙勲者は、三名だった。薬草の研究で功績を残した研究者と、巷で話題の本を執筆した文学者、そして国を陰で支え続けてきた騎士。

国を陰で支え続けてきた騎士とはつまり、失踪した王女を奪還し守り続けた男――アイヴァンのことだった。

クレアとアイヴァンの再会は、実に三ヶ月ぶりだ。瀕死のアイヴァンと、言葉とも呼べない声を交わして以来である。

広場の中心部で椅子に腰かけ待ち構えるクレアのもとに、叙勲者たちが民衆の拍手喝采を浴びながら姿を現した。

鷹の紋章の光る群青色の騎士団服を身に纏ったアイヴァンは、いつもにも増して、凛々しく威厳に満ちていた。

頬には傷跡が残っているものの、あのときに負った多量の傷は、見事に癒えている。

久しぶりに見るアイヴァンは、まるでクレアの知らない他人のようだった。

クレアを見て懐かしむ様子も、何かを言いたげな表情を浮かべる様子もなく、アイヴァンは受勲者としての立場を貫いている。


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