冷徹騎士団長の淑女教育
クレアは王女にふさわしい余裕の笑みを携えると、アイヴァンからスッと視線を外して背を向けた。

そして自分のために用意された、金色の豪華な椅子へと戻っていく。

アイヴァンとの間に取り返しのつかない距離を感じて、たまらなく胸が痛かった。

たまらなく泣き出したかった。

彼の驚いた顔も、怒った顔も、不機嫌な顔も――クレアだけが知るアイヴァンの素顔は、もう二度と見ることはできないのだ。

それでもクレアは表情一つ崩さず、椅子へと戻ると、凛と前を見据えた。

アイヴァンが育てた完璧な淑女を、民衆の目に焼き付けるために。
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