冷徹騎士団長の淑女教育
金色の朝日がまぶしくて、目が焼け付くようだ。

目を細めたクレアは、自分の頬を涙の雫が流れ落ちているのに気づいた。

まぶしさゆえの、生理的な涙だと思いたかった。

だが日の光が陰っても、涙は止まる気配がない。

アイヴァンが近くからいなくなると聞いて、心が動揺しているのは明らかだった。

あれほど、完璧な王女になると自分自身に誓ったのに。

「ほんと、いくじなしね……」

クレアは鼻を啜り上げながら、つぶやいた。

――すると。



「本当に、いくじなしだよ」

小馬鹿にしたような声が、誰もいないはずの真後ろから聞こえる。

驚いて背後を振り返れば、いつの間に部屋に入り込んだのか、エリックが微笑みを浮かべながら立っていた。

「エリック……。またバルコニーから入って来たの?」

「いや、今日は正々堂々と表から入って来たよ、ノックはしなかったけど。今では僕はすっかり信頼されているから、城の中でも色々やりやすいんだ」

悪戯っ子を彷彿とさせる笑みを浮かべつつ、エリックがクレアの方へと歩み寄ってくる。

「クレア、君にひとついいことを教えてあげよう」

そう言ったエリックの目が笑っていないのを、クレアは見過ごさなかった。
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