冷徹騎士団長の淑女教育

「アイバンの忠実な僕であるベンは、ときどき女に変装して宮中に潜り込み、諜報活動をしていたんだ。どこに潜んでいるか分からない、王家を狙う敵を見つけるためにね」

「どうしてアイヴァン様は、婚約をしたなどと嘘を吐かれたのかしら……」

「簡単だよ、君を突き放すためだ。自分は、君に寄り添える立場ではないと思っているんだろう」

クレアは、呆然とエリックの顔を見返した。アイヴァンの婚約が嘘だと気づいた今、気持ちが激しく乱れている。

そんなクレアを後押しするように、「自分に正直に生きろ」とエリックは言葉を繋ぐ。

「今ならまだ、アイヴァンはこの近くにいる。今朝は街はずれの孤児院に向かったと、ベンが言っていた。馬車までうまく誘導してあげるから、彼を追いかけるんだ」