冷徹騎士団長の淑女教育
ぱあっと、クレアは無邪気に顔を輝かせる。

淑女らしくふるまうことを忘れて、思わずアイヴァンに抱き着いていた。

アイヴァンはそんなクレアを拒むことなく胸に受け入れ、頭をぽんと撫でながら言った。

「……それから、約束するんだ。顔を隠し、なるべく人に見られないようにしろ。必要最低限なこと以外は、喋ってもいけない」

「分かりました」

理不尽な要求だが、きっと私の髪と顔が醜いからだわ、とクレアは思う。話をしても気の利いたことは言えないし、クレアが辛い思いをするだけだから、アイヴァンはそんなことを言ったのだろう。
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