冷徹騎士団長の淑女教育
大急ぎで荷造りをしているのだろう。すぐに、使用人たちがバタバタと駆け回る音が聞こえはじめる。
だが、もう既に手遅れだった。次第に大きくなる複数の馬のひづめの音に気づき、クレアは再び窓の外を見た。そして、この離れを含めた邸全体が、馬にまたがった騎士たちに包囲されるのを目の当たりにする。
あちらこちらで、敵国ユーリスの国旗である、鷹のシンボルが描かれた群青色の旗が翻っていた。
クレアは詳しいことは知らないが、この邸の主は、バロック王国の政治に関わる大物らしい。恐らく、この国を陥落寸前にまで追い込んだ彼らは、雇い主を捕らえに来たのだろう。
騎士たちは、雇い主のいる本館だけでなく、この離れにもすぐに攻め入り始めたようだ。
地響きのような騒音が階下から響き、人々の悲鳴や泣き叫ぶ声がクレアの耳に届いた。
クレアはそのまま、階段の踊り場にストンと腰を落とした。
(私は、きっと殺されるんだわ)
この掌の痣を目にしたら、きっと敵国の騎士は、子供とはいえクレアを生かしてはおかないだろう。
人々に災いをもたらす魔女は、忌み嫌われる存在だからだ。
手にした燭台を床に置き、両手で膝を抱え、じっと前を見据える。
不思議と怖くはなかった。華奢な背筋を伸ばし、ただ淡々と、迫りくるその時を待ち続ける。
だが、もう既に手遅れだった。次第に大きくなる複数の馬のひづめの音に気づき、クレアは再び窓の外を見た。そして、この離れを含めた邸全体が、馬にまたがった騎士たちに包囲されるのを目の当たりにする。
あちらこちらで、敵国ユーリスの国旗である、鷹のシンボルが描かれた群青色の旗が翻っていた。
クレアは詳しいことは知らないが、この邸の主は、バロック王国の政治に関わる大物らしい。恐らく、この国を陥落寸前にまで追い込んだ彼らは、雇い主を捕らえに来たのだろう。
騎士たちは、雇い主のいる本館だけでなく、この離れにもすぐに攻め入り始めたようだ。
地響きのような騒音が階下から響き、人々の悲鳴や泣き叫ぶ声がクレアの耳に届いた。
クレアはそのまま、階段の踊り場にストンと腰を落とした。
(私は、きっと殺されるんだわ)
この掌の痣を目にしたら、きっと敵国の騎士は、子供とはいえクレアを生かしてはおかないだろう。
人々に災いをもたらす魔女は、忌み嫌われる存在だからだ。
手にした燭台を床に置き、両手で膝を抱え、じっと前を見据える。
不思議と怖くはなかった。華奢な背筋を伸ばし、ただ淡々と、迫りくるその時を待ち続ける。