冷徹騎士団長の淑女教育
――パチッと火の弾ける音がして、クレアは目を覚ました。
うっすらと瞳を開ければ、暖炉で火が赤々と燃えているのが見えた。
今は春だ。それなのに暖炉がついているのは、おかしいと思った。
(でも……あたたかい)
体の震えが引いている。あれほど凍えていたのに、寒さなど微塵も感じない。
かじかんでいた指先も、陽だまりに包まれているかのようにあたたかい。
ぼんやりと投げ出された自分の手を目で追ったクレアは、驚きのあまり声を出しかけた。
大きな掌が、クレアの白い指先を包んでいたからだ。
その手の感触に、クレアは覚えがあった。毎日剣を握っているせいでごつごつとしていて、骨ばっていて、そしてとても大きくて――。
「アイヴァン様……」
クレアが呟けば、ベッド脇でこちらを見ていた漆黒の瞳が微かに揺れた。
とても心配そうな顔だ。いつも厳しく冷たい彼が、こんな表情をするのを初めて見た。
意識がはっきりとしてきたところで、クレアは今の状況を理解する。
クレアはアイヴァンの別宅の、見慣れた自分の部屋のベッドに横になっていた。
そしてベッド脇には、今日は来ないはずのアイヴァンがいる。しかも、クレアの左手を握って――。
うっすらと瞳を開ければ、暖炉で火が赤々と燃えているのが見えた。
今は春だ。それなのに暖炉がついているのは、おかしいと思った。
(でも……あたたかい)
体の震えが引いている。あれほど凍えていたのに、寒さなど微塵も感じない。
かじかんでいた指先も、陽だまりに包まれているかのようにあたたかい。
ぼんやりと投げ出された自分の手を目で追ったクレアは、驚きのあまり声を出しかけた。
大きな掌が、クレアの白い指先を包んでいたからだ。
その手の感触に、クレアは覚えがあった。毎日剣を握っているせいでごつごつとしていて、骨ばっていて、そしてとても大きくて――。
「アイヴァン様……」
クレアが呟けば、ベッド脇でこちらを見ていた漆黒の瞳が微かに揺れた。
とても心配そうな顔だ。いつも厳しく冷たい彼が、こんな表情をするのを初めて見た。
意識がはっきりとしてきたところで、クレアは今の状況を理解する。
クレアはアイヴァンの別宅の、見慣れた自分の部屋のベッドに横になっていた。
そしてベッド脇には、今日は来ないはずのアイヴァンがいる。しかも、クレアの左手を握って――。