冷徹騎士団長の淑女教育
「アイヴァン様、お待ちしておりました。今朝がた、新しいクレア様のドレスが届いたのです。良かったらご覧になってくださいませ」
アイヴァンに遅れて邸の中に入れば、二階へと螺旋階段の伸びた玄関ホールで、レイチェルがアイヴァンの上着と剣を預かっているところだった。
この十年で、レイチェルの白髪もだいぶん増えた。年も、そろそろ六十歳になろうかという頃だが、きびきびとした口調と身のこなしは相変わらずだった。
ここ十年クレアの身の回りの世話を一切引き受けてきた彼女は、クレアにとっては母親のような存在になっていた。
「どこにある?」
あまり気が進まないようだったが、アイヴァンはレイチェルの言葉には従順だ。もともとレイチェルはアイヴァンの乳母で、幼い頃から共に過ごしてきたらしい。いわば、アイヴァンにとっても母親のような存在だ。
クリフォード公爵家の本宅からこちらの別宅へとレイチェルを移動させたのも、年を重ねたレイチェルを気遣ってのことだとレイチェル自身が言っていた。人の出入りやパーティーの絶えない本宅は、使用人にとっては休まる暇もないほどに忙しいらしい。
「こちらでございます。お若いクレア様に合わせて、街で流行りのデザインにしてくださったようですよ」
奥の部屋へとアイヴァンを案内するレイチェルに、クレアも付き従う。
アイヴァンに遅れて邸の中に入れば、二階へと螺旋階段の伸びた玄関ホールで、レイチェルがアイヴァンの上着と剣を預かっているところだった。
この十年で、レイチェルの白髪もだいぶん増えた。年も、そろそろ六十歳になろうかという頃だが、きびきびとした口調と身のこなしは相変わらずだった。
ここ十年クレアの身の回りの世話を一切引き受けてきた彼女は、クレアにとっては母親のような存在になっていた。
「どこにある?」
あまり気が進まないようだったが、アイヴァンはレイチェルの言葉には従順だ。もともとレイチェルはアイヴァンの乳母で、幼い頃から共に過ごしてきたらしい。いわば、アイヴァンにとっても母親のような存在だ。
クリフォード公爵家の本宅からこちらの別宅へとレイチェルを移動させたのも、年を重ねたレイチェルを気遣ってのことだとレイチェル自身が言っていた。人の出入りやパーティーの絶えない本宅は、使用人にとっては休まる暇もないほどに忙しいらしい。
「こちらでございます。お若いクレア様に合わせて、街で流行りのデザインにしてくださったようですよ」
奥の部屋へとアイヴァンを案内するレイチェルに、クレアも付き従う。