冷徹騎士団長の淑女教育
アイヴァンはしばらくの間黙ってドレスを眺めていた。やがて、低い声でボソリと呟く。

「似合わないな」

いつも以上に淡白なアイヴァンの態度にクレアは驚く。今までのドレスの中でも一番のお気に入りだったため、納得がいかなかった。

「なぜですか? こんなに素敵なのに」



「大人のデザインだ。君にはまだ早い」

クレアの反撃をものともせずに、アイヴァンは素っ気なく答えた。

「それに、胸元が空きすぎている。子供の君には着こなせない」



クレアはムッとした。もう十八歳だというのに、アイヴァンはいつまでもクレアを子供扱いしようとする。そんなときクレアはアイヴァンとの距離を切実に感じ、怒りのような悲しみのような気持ちが込み上げるのだ。

「私は十八歳です。もう子供ではありません。街では私より年下の方でも、このようなデザインのドレスを着ています」

「体系にもよるだろう。華奢な君には似合わない」

鋭い目線とともにピシャリと言い切られ、クレアは言葉を失った。

たしかに、クレアは華奢だ。やせっぽちだった少女の頃よりは幾分か肉付きは良くなったが、腕も足も、街行く女性たちよりほっそりしている。
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