冷徹騎士団長の淑女教育
「では……邸の中で普段に着る分にはよいですか」

「だめだ」

「でも……。どうせ邸の中で着るだけなのだから、誰にも見られやしないではないですか」

クレアが日常的に会うのは、アイヴァンとレイチェルと、寡黙な庭師の男だけだ。似合わないからといって大衆の目に晒されるわけではないのに、着てはならない意味が分からない。せっかく仕立てたのに、もったいないと思う。

「ダメと言ったらダメだ。そんなことより、ダンスのレッスンを始めるぞ」

有無を言わさぬ口調でアイヴァンは言い捨てると、不服そうなクレアをそのままに、ダンスホールの方へと消えて行った。
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