冷徹騎士団長の淑女教育
クレアのサラサラのプラチナブロンドが、風になびいた。

(どうしよう……)

困惑しながら目の前の青年を見やれば、驚いたように目を見開いている彼と目が合った。なんだかよく分からないが、固まっている。とにかく、この隙に逃げるしかないとクレアは判断した。

「ありがとうございます。私なら、大丈夫ですので……!」

差し出されたままの青年の手を握らずに、クレアは自力で立ち上がった。そして、これ以上自分の醜い顔が人目に晒される前に、速足で逃げ帰ろうとした。

だが、ようやく人でごった返す広場を抜けたところで、「待って!」と後方から声を掛けられる。

振り返れば、先ほどの青年がクレアを追いかけてきていた。




「一人? よかったら、送っていくよ」

うっすらと微笑みながら言われ、クレアは動揺した。

あまり人とは関わるなと、アイヴァンに言われているからだ。親切な彼の誘いを無下に断るのは心が痛むが、クレアにとってはアイヴァンこそがこの世の何よりも大事だった。

「大丈夫です。慣れていますから……!」

顔が見えないように、俯き加減に立ち去ろうとした。

だが足の長い彼は、走っているわけでもないのに優にクレアに追いついてしまう。

「でも、女性一人は危険だ。この辺りは安全な地区ではあるけど、世の中何があるか分からないからね」

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