冷徹騎士団長の淑女教育
(友達……)

クレアは、漠然と友達というものに憧れていた子供の頃を思い出した。

アイヴァンとレイチェルがいれば友達なんていらないわ、と最近は開き直っていたが、にわかに胸がざわつき出す。

だがすぐにアイヴァンとの約束を思い出し、エリックに向けて軽く頭を下げた。

「では、失礼いたします」

「うん、またね」




立ち止まるエリックをそのままに、クレアは足早に家路を急いだ。久々に他人と話せて、しかも女性扱いされて、気持ちが高ぶっている。

やがて住み慣れたアイヴァンの邸が見えてくると、クレアはいつもより少し弾んだ気持ちで、門扉を押し開けた。

すると、

「ふうん、ここが君の家か」

と、背後から声がした。

驚いて振り返れば、向かい側にある邸の塀に寄りかかるようにして、エリックが立っていた。どうやら、気づかないうちに後をつけられていたらしい。

エリックが、形の良い唇をゆっくりと開く。

「君は、アイヴァン・ジェイク・クロフォードとどういう関係なの?」

相変わらず微笑を浮かべてはいるが、油断のならない男だ。

クレアは足早に敷地内に入ると、急いで扉を閉めた。
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