冷徹騎士団長の淑女教育
第四章 美青年の誘惑
どうして、アイヴァンを困らすようなことを言ってしまったのだろう?
翌日から、クレアはその日の夜のことを後悔してばかりだった。
あの日から、アイヴァンとはどことなくぎくしゃくしている。子供の頃は年を重ねればアイヴァンとの距離が縮まると思っていたのに、これでは離れる一方だ。
そしてあの夜から数えて四日目の夕方、クレアをさらに追い込む事態が訪れる。
それは夕方、クレアが自室の窓から外を見ていたときのことだった。
(あ、アイヴァン様の馬車だわ……)
徐々に大きくなる軽快な車輪の音とともに、剣を象ったクロフォード家の紋章の刻まれた漆黒の四輪馬車が、通りの向こうから姿を現した。
アイヴァンとはぎくしゃくしていようとも、彼が来るのが待ち遠しいのには変わりない。クレアは胸の高鳴りを感じながら、窓の向こうに釘付けになった。
やがて、停止した馬車の後ろ扉から、アイヴァンが姿を現す。群青色の騎士団服に、腰に提げられた銀色の剣。いつもと変わらず凛々しいアイヴァンから、クレアは目が離せない。
ところが、アイヴァンに続いて馬車から出てきた人物を見て、クレアの胸に稲妻に似た衝撃が走った。
それは、深紅の派手なドレスを着た女性だった。同色の羽根つき帽子に、襟足に零れ落ちた茶褐色の髪の毛。遠目からでも、彼女が女らしくスレンダーな体系をしているのが見て取れる。
(いやだ、見たくない……)
咄嗟にクレアは窓から目を反らすと、窓辺から離れベッドに腰かけた。
翌日から、クレアはその日の夜のことを後悔してばかりだった。
あの日から、アイヴァンとはどことなくぎくしゃくしている。子供の頃は年を重ねればアイヴァンとの距離が縮まると思っていたのに、これでは離れる一方だ。
そしてあの夜から数えて四日目の夕方、クレアをさらに追い込む事態が訪れる。
それは夕方、クレアが自室の窓から外を見ていたときのことだった。
(あ、アイヴァン様の馬車だわ……)
徐々に大きくなる軽快な車輪の音とともに、剣を象ったクロフォード家の紋章の刻まれた漆黒の四輪馬車が、通りの向こうから姿を現した。
アイヴァンとはぎくしゃくしていようとも、彼が来るのが待ち遠しいのには変わりない。クレアは胸の高鳴りを感じながら、窓の向こうに釘付けになった。
やがて、停止した馬車の後ろ扉から、アイヴァンが姿を現す。群青色の騎士団服に、腰に提げられた銀色の剣。いつもと変わらず凛々しいアイヴァンから、クレアは目が離せない。
ところが、アイヴァンに続いて馬車から出てきた人物を見て、クレアの胸に稲妻に似た衝撃が走った。
それは、深紅の派手なドレスを着た女性だった。同色の羽根つき帽子に、襟足に零れ落ちた茶褐色の髪の毛。遠目からでも、彼女が女らしくスレンダーな体系をしているのが見て取れる。
(いやだ、見たくない……)
咄嗟にクレアは窓から目を反らすと、窓辺から離れベッドに腰かけた。