冷徹騎士団長の淑女教育
ちっぽけなクレアの体を抱きかかえることなど、この屈強な騎士には何の負担もないのだろう。

クレアを抱えながら、騎士は再び階段を降り始めた。

階下には使用人たちの姿はなく、散らばった家具や物が、惨状を物語っていた。

皆、どこかに連れて行かれたのだろうか?




クレアにしろ、これから自分がどこに向かうのか、どうなるのか分からない状況だ。

クレアには目もくれず黙々と歩む騎士は、それを話してくれそうにもない。

それでも、彼の腕の中は場違いなほどに居心地がよかった。

クレアは彼の体に身を預けるうちに、瞼が重くなっていくのを感じる。

そして、いつしか眠りに落ちていた。




漆黒の騎士はクレアを自らの馬に乗せ、ユーリス国の騎士団とともに、数日掛けて自国に戻った。

そしてクレアを、街はずれにある瀟洒な邸宅に連れ帰ったのである。
< 7 / 214 >

この作品をシェア

pagetop