冷徹騎士団長の淑女教育
第五章 騎士団長の本音

茂みを抜け、迷路のように入り組んだ庭園を行くうちに、またイライラが募ってきた。そもそもベンがこんな複雑な構造にしたから庭に盲点ができてしまったのだと、アイヴァンは憤慨する。

見通しのよい庭であれば、エリックも侵入など目論まなかっただろうに。

ようやく邸に面した広い芝生に出てきたところで、問題の張本人であるベンがどこからともなく姿を現した。相変わらず、気配を感じない男だ。

「先ほど、フィッシャー家のエリック様が門から出て行かれました」

「俺が追い出したから知っている」

「左様ですか」



怒り露なアイヴァンの様子にも、ベンは動じない。

邸の異変に真っ先に気づいたのは、ベンだった。塀に足跡のような痕跡があると彼がアイヴァンに報告したのが、昨日のことだ。

胸騒ぎがして、アイヴァン自らが所用の合間に別宅の庭を散策してみれば、茂みに隠れるようにして密会しているクレアとエリックを見つけたというわけだ。
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