迷子のシンデレラ

「でも……もういいんだ」

 彼は真っ直ぐに智美を見つめた。

「僕はただ一人を愛するって決めたから」

 彼の固い決意を聞いてこぼれそうな涙を必死で我慢した。
 シャーロットさえももう彼の心に響かない。

 彼は彼にふさわしい婚約者を選んだのだ。

 もしかしたら自分をシャーロットだと見透かして最後の宣告に来たのかもしれない。

 ショックのせいなのか目の前が真っ白になっていく。

「え? 智美ちゃん?
 大丈夫? 智美ちゃん!」

 薄れ行く意識の中で彼の声がこだました。

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