迷子のシンデレラ

 目を開けると白い天井に壁。

「智美? 大丈夫?」

 目に映ったのは恵麻だった。

「私……」

「貧血で倒れたの。覚えてない?」

「貧血……それで……」

「葉山さんから連絡をもらった時は肝を冷やしたわ」

 智美が目を覚ましたことでホッとしたことが見て取れるが、それでも恵麻は心配顔だ。

「ごめんね。恵麻。迷惑をかけて」

「何、言ってるのよ」

 両親が他界して天涯孤独の智美はこういう時に頼れる人がいない。
 きっと全てを恵麻がしてくれたに違いない。

「たいしたことないからすぐにでも退院できるだろうって。
 葉山さんにお礼を言っておいた方がいいわよ。
 彼、智美が倒れたって、ものすごく慌てた様子で連絡を寄越したから」

 恵麻のアドバイスに力なく笑う。

「彼とはもう会わない方がいいと思うの」

「そう……。
 それで智美がいいのなら」

 恵麻は智美の両手を握って「私は頼ってよ。ね」と涙をこらえたような潤んだ瞳で訴えた。
 智美の決断を智美以上に重く受け止めてくれているようだった。


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