迷子のシンデレラ

 何よりも自分の気持ちを彼へ伝えたかった。
 それらは叶わないことだと決めつけて彼のことを信じ切れなかった自分を彼は見つけ出して、今こうして側にいてくれる。

 彼を……目の前の彼を信じたい。

 柔らかな視線を向けている葉山の胸元へ琉依を渡す。
 彼はぎこちなく抱き上げるとますます頬を緩ませた。

「可愛いなぁ。ずっと見ていられそうだよ」

「……ッ」

 琉依はまだ泣いていて、こんな時にそんなことを言えるなんて……。

「もちろん。智美ちゃんもね」

 智美へも優しい視線を向けて「ほら、布団へ横になって」と、促した。
 その間も琉依を抱いて優しくあやしている。
 大きな腕に抱かれて安心したのか、琉依の泣き声もおとなしくなってきた。

 安堵するとともに、寂しい気持ちにもなる。
 琉依を取られたような変な気分だ。
 そして何より彼と……。

 彼と離れたくない。
 側にいたい。
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