迷子のシンデレラ
「葉山さんは……」
「僕はここにいるよ」
「近くに座ってください」
「あぁ。うん。そうだね」
智美が横になってその近くへ葉山が座ろうとすると琉依はまた火がついたように泣き始めた。
「そうだ。忘れてました。
いつも寝たと思って座ると泣いてしまうんです。
こんな風に」
「ハハッ。これは大変だ。
僕は大丈夫。抱っこしておくから智美ちゃんは寝て?」
琉依を恨めしく思いながら智美はおとなしく目を閉じた。
葉山の元を去り、それから琉依が産まれた。
それ以降、何よりも琉依が一番で、琉依が何よりも大切だったのに。
その琉依を恨めしく思う日が来るなんて。
少しおかしくて、けれど幸せで。
その幸せを噛み締めながら横になっていると疲れていた体は夢の中へと落ちていった。