迷子のシンデレラ
「父が……」
あぁ。やっぱり。
彼の固い表情から覚悟を決めて、目を閉じた。
ひとときの夢を見られたのだ。
それでいい。
例え、彼とは家族になれなくても、彼ならばきっと琉依を悪いようにはしない。
そう思えるだけ幸せだ。
彼から告げられる言葉を最終宣告を聞く心持ちで待った。
「結婚する前に会わせろって」
「……へ? 誰が誰と?」
間抜けな声は図らずも場を和ませた。
「智美ちゃん以外に誰がいるって言うのさ」
葉山は智美に近づくと体を屈めて鼻に噛みついた。