迷子のシンデレラ
葉山の車に揺られ移動する。
窓の外は見慣れた景色から懐かしい景色へと変わっていく。
短大を卒業して4年近く。
毎日を懸命に過ごしていた場所。
ずっとここで過ごすと思っていた。
小さくてもささやかな幸せを見つけて。
けれど彼に出会ってしまった。
驚きと共に喜びをもたらした琉依を自分へ授けた彼。
これから彼とどうなっていくのか想像がつかない。
ただ、車で移動する前提でチャイルドシートが後部座席に備え付けられていたことに気付いた時は彼の本気度が窺えた。
彼は真剣に家族になろうとしていた。
しかしそうであろうとも、周りがそうはさせてくれないのではないだろうか。
葉山自身も同じ思いなのか、重々しい空気の中で口を開いた。
琉依の隣、後部座席に座る智美へバックミラー越しにチラリと視線を向けた。
「家の事情に巻き込んでしまってすまない」
「いえ……」
「さすがの父も相手を妊娠させたと言ったらどんな相手だろうと折れると思った」
運転をしながらの会話はほとんど前を見ていて視線が交わることはない。
そのことが自分たちの心のようで寂しさを募らせた。