迷子のシンデレラ
「やっぱり私ではお父様に認めてもらえないと思っていたんですね」
「それは……ごめん。
父が勧める女性は全て名だたる令嬢ばかりだ。
父は事業拡大にしか興味がないんだよ」
バックミラーに写る彼の寂しそうな横顔が胸を痛くさせる。
信号で止まっても彼は目を伏せてこちらを見ない。
智美は手を伸ばしてギアの上に置かれた葉山の手に自分のそれを重ねた。
葉山は顔を上げ、目を丸くして振り向いた。
「大丈夫ですよ。きっと」
何が大丈夫なのかはよく分からない。
けれど彼が何かに囚われて心を砕いている様を見ていられなかった。
自分の父のこと、自分が継ぐであろう事業のこと、それから智美のことに、琉依のことも。
彼は様々なことを智美が思っている以上に考えて、その上で自分たちと家族になろうとしてくれているようだった。