迷子のシンデレラ

 葉山は智美が重ねた手を取ると手の甲にキスを落として、小さく微笑んだ。

「僕がしっかりしなくてはいけないのに、逆に励まされちゃったな。
 ……愛しているよ。智美」

 手を返して手のひらの方にも唇を重ねてから葉山は前へ向き直った。
 信号は青に変わりそうで、手をいつまでも握っていられない。

 離された手を自分の胸の前で握りしめた。
 昨日から戻ってきた母の形見である指輪とともに。

「私も……愛しています」

 自分で言った言葉に胸が熱くなった。
 彼への思いが溢れて涙が出そうになる。

「……うん。ありがとう。
 あー。ベッドの上で聞きたかったよ」

 口元に手を当ててぼやいた葉山に顔を赤くさせて背中へ向かって文句を言う。

「そんなこと平気で口にしないでください!
 勇気を出して言ったのに……」

「ごめん。
 嬉しくて、つい茶化してしまったよ」

 そう言って照れたように笑う彼が愛おしかった。

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