迷子のシンデレラ
広い執務室は重厚なソファに囲まれた応接セットの奥にデスクがあり、葉山の父はそのデスクの奥にいた。
こちらに背を向け、窓の外を見ている。
葉山たちが入室しても振り向きもしなかった。
葉山は苦々しい表情を浮かべて噛み付くように言った。
「前にも言ったはずだ。
俺はあんたに何を言われようと智美と結婚するし、産まれた子どもも俺が育てる」
挨拶もされないまま、話し合いというよりも言い放った葉山から言葉を向けられた本人は、微動だにしなかった。
「彼女とではあまりにも立場が違い過ぎる。
それで幸せになれるとでも?」
紹介されずとも自分のことは知られていて、葉山の父も全てを把握しているのだ。
そしてやはり良く思われていない。
智美は体を固くした。
「俺が智美でなければダメなんだ。
俺たちのことだ。放っておいてくれ」
吐き捨てるような言い方にも動じていない葉山の父から質問を向けられた。
「智美さんはどう思っておいでですか?
ご自分が周平と一緒になって幸せになれると?」
お前では役不足だと言われているのは明白だ。
それでも智美は口を開いた。