迷子のシンデレラ
「ハハハッ。こんにちは、智美ちゃん」
にこやかな笑顔は既視感があった。
でも、嘘……。そんなわけ……。
「親父。何を馴れ馴れしく……」
葉山の声が遠くに聞こえる気がして、智美は呟いた。
「内村課長」
「は?」
葉山は言葉を失って、葉山の父は懐かしさを感じる笑顔で微笑んだ。
葉山の父なのか、内村課長なのか、正体がつかめない彼に勧められ、応接セットのソファに腰を下ろした。
狐につままれたような心持ちで待っていると正体不明の彼が話し始めた。
「私は正真正銘、周平の父、葉山周蔵だ」
厳格な顔つきでそう述べた彼をまじまじと見つめる。
「そして、ある時は内村課長と名乗っていた」
これには葉山が噛み付いた。
「何を言ってるんだ。
内村課長はもっと人好きのしそうな温厚な……智美?」
智美の様子がおかしいことに気づいて葉山は智美と自分の父を見比べた。